暗い、暗い闇の底深くに私は立ちすくんでいた。
何をしてこんなところにいるのかは分からないが声をあげようとも声は出ない。
仕方がないから私は歩いてみた。
景色は変わることなく暗闇が広がるだけ。
そこに低い呻き声が響いた。恐ろしく、体が震える。どうしてそうなるかなんて自分では何も分からない。考えられない。
助けて、みね。
そう呼ぼうにも呼べない。
先程まで暗く何も見えなかった。
なのに今は、醜い化け物が私を取り囲んでいた。
来ないで!助けて!誰か!助けて!
出ない声を必死に出そうとする。
「選べ...お前が生きる...道を」
地に這ったような声。背中が凍るような冷たい声。
選ぶ...?何を?
出ないはずの声はなぜか、空間に反響する。
「...選べ...お前は...どちらかで...生きるのだ......白か黒か」
なんの話...?気になる。
聞きたいのにその声は遠くに遠ざかっていく。
不思議だった。
先程まで恐怖に染まっていたのに、今は、どうしてその化け物が私にそんなことを聞くのか気になって仕方がなかった。
遠ざかっていく声を聞き取ろうとして追いかけるがどんなに追いかけても追いつけない。


