1話でビビって気絶してたからもっと弱そうな子かと思っていたんだが...案外力はあるようだな...

峰岸は彼女らの後ろ姿を見ながら思っていたのだった。

朝礼は滞りなく終わり、その足で保健室へ向かう。

ガラリと扉が開かれた部屋には保険医は居らず、カーテンで仕切られたベッドがある。

そのカーテンのうち1つを開ければ小さな寝息をたてている俺の今の主。
否、契約主だ。

「...無理をさせたか」

人間というのは存外扱いにくい種族だ。
脆く、儚い生き物。たったあれだけのことでこんなに窶(やつ)れてしまうのだから。

彼女の頬に手を這わせ愛しいあの人に重ね合わせて視る。

似ているな......本当に。

「...ん、...っ...あれ...みね...?」

目を覚ました様子の主。

アホらしい顔を見ていれば先程までの心配はどこへやら。存分に馬鹿にしてやりたくなる。

「おはようございます、姫」

顔と顔の距離が数センチ程まで近づけて耳元で囁いて悪戯っぽく笑う。

彼女は赤く顔を染め上げて俺の胸を叩く。

全然痛くもないが主の気持ちに応え離れた。

「ば、ば、ばばばばっかじゃないの!?!?あんた、大丈夫!?普通にダメだと思うんだよね!うん!!そういうの良くないよ!良くない!!」

「おや。顔が赤いですね。照れました?」

そう言ってやれば彼女は自身の手を勢い良く頬に当てて隠す。

ほら、そんな反応をするからもっとしたくなってしまうんだろう。

そう思いつつも、からかいたい気持ちを抑える。

「...冗談はさて置き、もう少し寝ていてはどうですか。昨日のトレーニングのやりすぎで睡眠不足のようですし今夜に支障をきたしますよ」

誰のせいだと言われれば俺のせいなんだが。

「...うん、わかった。おやすみー」

きちんと脳が起ききっていない今の主には反抗されることはない。

再び寝入った彼女の髪をすくい上げキスを落とした。

...絶対にお前を守る。約束を果たすために。
そう願いを込めて。