うちの執事は魔王さま

暖かい水が頬から滑り落ちた。
それが涙だと分かるまでそう時間なんかかからなかった。

嫌いだ。何を考えてるのかよく分からない。

でも、それでも......

「幼く両親もいない私をあの家で育ててくれたのは...紛れもないみねなの......私の中じゃあんたも家族なのに...!」

たくさんの涙が頬を濡らす。

視界も涙のせいで歪む。

泣いているのも馬鹿らしくて俯きいくら待っても出続ける涙を拭く。

「みねなんか、......あんたなんか、だいきら」
言い終える前にふわりと鼻腔をくすぐった落ち着く匂いが包んだ。

例えで言えばお母さんのような匂いだ。
私にお母さんなんて存在はいないけれど、いたらきっとそれなんだ。

存在がしっかり分かるようにきつく抱き締められている。

「...姫、その続きは全てが終わってからきちんと考え直して私に申し付けください。姫にそのような想いをさせてしまい申し訳ありません。私も長く居座って見透かした気でいたのかも知れませんね。ほんとに人間とは分からないものです。...しかし姫に対しての数々の無礼は悪いとは思ってません。理由はいつか分かりますが全ては貴方のためなんです。このことが今は分からなくても構いません。ですが、必ず貴方なら分かっていただけると私は信じています。ですから、姫」