「で、それは?」

私が落ち込んでる中、聖が写真を指さす。


「あ、ご、ごめん!風で下に落ちちゃって……。
あと勝手に見ちゃった。それもごめんなさい」

間違いとはいえ無断で部屋に入って写真を見るなんて……。


「見たんじゃなくて見えたんだろ。だったら別にいい」

聖は不器用な言葉で私を許してくれて、写真立てをそっと元の位置に戻した。

それは丁度ベッドから見える場所。横になって寂しい時に見つめ合えるような、そんな位置。


私はなにも聞かなかった。

聞けなかったんじゃなくて、まだ聞いてはいけないと思った。


聖のことはまだ知らないことばかりだけど人づてじゃなく、盗み聞きでもなく。

いつか聖の口から全てを知りたい。

その遠くを見つめる目も、ひとりで抱えている過去も。

それを受け止めてあげられるぐらい、私も強い人になりたい。