「じゃあ、俺が――」

おうむ返しのように聖が言葉を言いかけると……。


「まりりーん!霧島のこと追い払ってきたよ!」

「茉莉ちゃん、これまだ食べかけのお弁当」

ふたりがタイミング悪く私たちのところに戻ってきた。


さっきの続きを聞きたいけど、もうそんな雰囲気じゃない。聖はまたため息をついて頭をガシガシと掻いている。

そんな私たちのことは知らずに晶くんと昴さんはいつもどおり。


「ねえ、早く食べないと昼休み終わっちゃうよ!ってかまりりん食べさせて?」

「いや、茉莉ちゃんには俺が食べさせてあげるよ。茉莉ちゃんの好きなおかずがまだいっぱい残ってるしね」

「えー昴兄さん抜け駆けする気?」

「晶こそ茉莉ちゃんを困らせるなよ」

そんなふたりのやり取りを見て、聖と同じ顔で笑みが溢れる。


そんな様子を見ながら気が付くとふたりには内緒で聖が後ろで手を握ってくれた。

また聖の顔が真っ赤で、もちろん私も。

でも嬉しくて握り返して、その温もりを確かめる。


「ちょっと、ふたりともなにしてんの?早く向こうに移動しようよ!」

晶くんと昴さんが私たちを手招きしていた。


今日も明日も明後日も、こんな騒がしい日々が続いていく。

そしてそのたびに私は一条三兄弟に振り回されてしまうのだろう。


だけどそんな毎日が………。

今はどうしようもなく幸せだ。



〈END〉