「好き勝手にさせないなんて臆病者のお前にそれを食い止める力があるのか?ないだろ?狼になることをいまだに恐れ続けているお前になにができるって言うんだ?」
「………」
「力が暴走するのが怖いのか?それとも制御できる自信がないのか?」
「………」
霧島くんの言葉に聖はずっと黙ったまま。
聖がまだ狼なることを拒んでいることは分かっている。お母さんのことを私に打ち明けてくれたからといって簡単には揺るがない気持ちがあることも。
そんな聖の心の内側を読んだように霧島くんは呆れた顔をした。
そして次の瞬間グッと身体を引っ張られて、気づけば私は霧島くんの腕の中にいた。
「……んん……っ」
大声を出さないように私の口を手で塞いでいて息が苦しい。
「てめえ……っ!」
聖が霧島くんを殴ろうとしたけど、カラスのような身軽な動きでひょいっと交わされてしまった。
「こいつは俺がもらっていく」
「……茉莉っ!」
聖の声がぼんやりとしか聞こえない。私も術にかけられてしまったのか、それとも息苦しさからなのか意識が遠退いていく。
最後に見たのはめちゃくちゃリビングで倒れる晶くんと昴さんの姿。そして聖の私を救おうとする必死な顔。
どこまでが現実なのかさえ、色々なことがありすぎて分からなくなってきた。
全部夢ならいいのに……。
またみんなでご飯を食べたり、ふざけたり、大きすぎる三人の背中を追いかけながら楽しい毎日を過ごしたい。
そんなことを思いながら、私の意識はプツリと切れた。



