「自分が傷つくことより誰かを傷つけるほうが怖いなんて、お母さんに似てるのは聖のほうだよ」
自分の気持ちを優先しないで人のことを考える。本当に聖はお母さんそっくりだ。
「聖が狼になってみんなに迷惑をかけたとしても離れていかない人たちが聖の周りにはいる。昴さんも晶くんも匠さんも、それに……私もいる」
さらに握る手を強くする。
私がかけられる言葉なんて限られている。その中で少しでも聖に心に届くように……。
「だから今すぐじゃなくても狼の自分も人間の自分もちゃんと好きになって」
苦しいなら狼にならなくていい、なんて言わない。人間のまま楽しく生活すればいい、なんて言わない。
だって聖は狼男だから。
その血筋があったから、こうして聖は生まれてきた。
「お母さんもそれを望んでると思う。きっと今でも一番近くで聖のことを見てるはずだよ」
聖の部屋に飾ってあった〝あの写真〟のように。
目と目が合える場所に今でも置いてある写真に写るお母さんの顔は本当に優しくて、その面影は聖の中で永遠に消えることはない。
だからこそきっと『狼の自分を嫌いにならないで』って、私にはそう言ってくれてる気がした。
「……そうだな。ありがとう」
聖も私の手を握り返してくれて、その日は長い時間星空の下で互いのことを語り合った。



