「今日、庇ってくれただろ」

聖が照れくさそうに顔を掻く。


「あれは私が単純にムカついただけ!っていうかアイツを思い出させるようなこと言わないで。
イライラしちゃう」

「ちょー怒ってんじゃん」

「わ、私だって怒る時ぐらいあるの!」

って、聖に八つ当たりしても仕方ない。


ふわりと私たちの間に風が吹き抜けて窓際に飾ってある魔除けがカタカタと揺れる。

こうして見ると愛着が湧いてくるかも。私を守ってくれた魔除けだし大切にしよう。


「お前さ……」

「え、は、はい!」

ヤバい。聖と話してたのに全然違うこと考えてた。


「なんにも聞かねーのな」

柔らかく、そして切なそうに私を見るからつい手すりを握る手を強くしてしまう。


「……聞かないよ。話すって選択肢は聖が決めることだもん」

だから急かしたりしたくないし、話すことでツラくなるなら永遠に言葉にしなくてもいいとさえ思う。

そのぐらい私は聖に苦しんでほしくない。


「お前はそういうヤツだよな」

「え?」

「自分の気持ちとか考えとかはちゃんとあるのにそれを優先することはない。いつも自分じゃなくて誰かのことばっかり」

「………」


「だから似てるんだよ。お前は。母さんに」


泣くのを必死で我慢していた。

聖がそんな風に思ってくれていたことと、
〝母さん〟と口に出してくれた聖の心の奥。

それを想うとすごくすごく胸が苦しくなった。