「ああ、もしかしてカラスか?」

「え……?」

「いや、俺が飛び移る時にバサバサッて大量に飛んでいったから」


つまりあの黒い物体はカラスだったってこと?

なんで私のベランダに?

そもそもカラスが集まって人の形のようになることってある?そんなの誰かが操らない限り不可能なんじゃ……。


「どうした?」

私が考えこんでしまったから聖は心配そうな顔をしている。


「それよりお前さ……」

聖がなにかを言いかけた時、私の部屋のドアがノックされた。


「茉莉?大きな声がしたけど大丈夫?」

お、お母さん……!


「なにかあったのか?心配だから中に……」

お父さんまで!?


今ふたりに部屋に入られたらマズい。だってだって聖がいるんだよ!

いくらお隣さんでベランダを飛び越えられる距離だとしても、お母さんたちにその考え方はない。


「だ、大丈夫大丈夫!む……虫!虫が入ってきてビックリしちゃっただけ!」

慌てて聖をカーテンの裏に隠す。


「え、ちょ、押すなって」

「しーー!」

必死で隠したくても聖の背と身体が大きすぎてムリ。


「本当に大丈夫なの?」

確認するようにまたお母さんの声。


「う、うん!大丈夫!もう寝るところだからさ!」

「ちゃんと窓だけは戸締りして寝るんだぞ」

「分かってる!お父さんお母さん、おやすみなさい!」


ふたつの足音が階段を下がっていく。1階に戻ったのを確認してとりあえず深呼吸してみた。