「アレ本当にそういう意味じゃなかったんだ。
でもお前けっこう落ち込んで帰ったからずっと気になってて」
「……気にしてくれてたの?」
「まあ」
昨日のことがチャラになるぐらい嬉しい。
っていうか……聖、ちょっと変わったな。前までは他者を寄せ付けない雰囲気を出して近づきずらかったのに今は空気が柔らかい。
「うちは男兄弟だし親父もあんな感じだし。だから女との接し方が分からないっていうか……。今までこんな風に話すヤツなんていなかったから」
「………」
「だから言葉足らずでお前を傷つけたとしたら……」
「私傷ついてないよ!」
聖は悪意ある言葉を言わない人だって知ってる。それに聖は私の知らないところで守ってくれた。怒ってくれた。
だから私は……。
「聖にならなに言われても平気だよ!男と話してるように接してくれても全然大丈夫だし、言葉だって選ばなくても……」
「お前は男じゃねーだろ」
聖の瞳が私をまっすぐに見つめている。夕日のオレンジが聖の髪の毛に反射していて綺麗。
ドクンと心臓が速くなる前に聖の手が私へと伸びてきた。そして長い指先が私の髪の毛へと触れる。
優しい触りかた。まるで繊細なガラスを扱っているかのよう。
なにかを言いたそうな顔をして、なにかをしようとしていた素振りをして。
でも聖はそっと私の髪の毛から手を離した。
「ゴミついてた」
そんな分かりやすい嘘をついて。聖は再びレポートをやりはじめてしまった。



