よく行くカフェに入って、アイもわたしもシャリシャリしたのを頼んだ。

ここのカフェには、王子様みたいにカッコいい店員さんがいる。

シャリシャリを持ってきてくれたときに、眼福、眼福、って店員さんにちょっとだけ見とれていればアイがムッとした顔をしたけど、アイだっていつもユウタに見とれてるよね、可愛くて仕方ないって顔してるよね。




「あのカキウチって店員さん、タクワって店員さんと付き合ってるんだって。道端でキスしてるの何人も目撃してるみたいだよ」




だからんな顔しても無駄だよ。

それでもわざとらしくムッとした顔をするんだから、どうしようもないね。


一生そうやって、嫉妬すればいいよ。死ぬまでわたしのこと大好きでいればいいんだ。

わたしは一生、アイのことを大好きでいられるのかなって考えて、一瞬で答えが出た。考えなくても答えなんて出てるんだけど。




「一口ちょうだい」




わたしのもあげる、って差し出せばなぜかちょっとだけ恥ずかしそうにする。


呆れた。

間接キスとかまだそんなこと言うの。

ばかじゃないの、ばか。

だけどそんな藍佑のことをちょっと可愛いとか思っちゃうわたしもやっぱりばかだ。


わたしたちってほんとうどうしようもない、ってアイから視線を逸らしたらこっちを見ていたカキウチさんと目が合って微笑まれる。

なるほど、王子様はいつでも王子様なのか。


わたしたちのやり取り見られてたのかな、って思ったらちょっと恥ずかしくて、わたしも曖昧に笑ってからアイに視線を戻す。

そしたらジト目でわたしのこと見てるから、また嫉妬してるの、ってさらに呆れた。




「アイってほんとう、わたしのこと大好きだよね」




うん、好きだよ。

当たり前のようにそんなこと言うから、もっと呆れた。




ゆっくり、でもたくさん喋ってからカフェを出る。

お会計のときにカキウチさんに、可愛い彼氏さんですね、って言われた。


可愛い彼女さんですね、って言われるようなことをしてくれないアイにやっぱり呆れたけど、そうですうちのアイは可愛いんです、ってアイの可愛さを分かってくれたカキウチさんにちょっと嬉しくなる。

帰ろうか、ってカフェを出て二人で日陰を探して歩いた。

相変わらずわたしがアイを家まで送って、じゃあね、って別れるその瞬間。


あのさ。

ウタのほうがかわいいよ。




ほんとう、呆れた。







fin.