「アイ!」




新島が立ち上がって名前を呼ぶ。呼ばれた方は嬉しそうな顔をコチラに向けた。




「また背中に貼ったでしょ。気付かないうちに落ちちゃったらどうするの」




そこ、ツッコむところ違うだろ。と心の中でツッコむ俺。

怒られている“新島にゾッコンなクラスメイト”の花園藍佑は恥ずかしそうに笑っていて、お前もそこは恥ずかしがるところじゃないだろ。とツッコむ。ほんと仲良いなお前ら。


二人を見て笑う俺は数週間前に薄黄色のポストイットを背中に貼られた。“ウタのこと好きにならないでね”なんねぇよ、ばーか。

男のクセに綺麗な文字、薄黄色のポストイットを黙って新島に渡すと「アイって本当…」と呆れたように息を吐いた。そんな態度のクセに俺が渡した薄黄色のそれを大事に手帳に貼り付けて文字を指でなぞる。

お前も愛され純粋ボーイと変わんねぇよ。と言ってやろうかと思ったけどやめた。




「アイ、帰るよ」




いつもの声が聞こえた。ニコニコと笑ういつもの顔が見えた。

教室を出ていく二人の後ろ姿を見て俺も教室を出る。幸せそうな二人が早く幸せになればいいのに。と、花園藍佑の背中に何かが見えた。

“知ってる”そう一言書かれたポストイット。




「花園、背中に何か付いてるよ」









fin.