上手く眠れていなかったせいか、授業は寝て過ごした。
隣の奥田は呆れたようにノートを見せてくれた。いい友達を持ってわたしは幸せもののはずなのに、そこにアイがいないだけで世界が鈍色に見える。
授業中、わたしは夢を見た。
放課後の教室で眠っているわたしを何故かわたしは上から見ていて。たぶんこれは去年の夏だ、と直感的にそう思った。
クーラーの止まった教室、生ぬるい風が入ってくる窓。半そでシャツの袖を更に2回折っていて、今よりも短い髪の毛がおでこに張り付いている。
隣同士のわたしとアイの机、わざわざ藍佑の机で眠っている理由は考えなくたってすぐに分かる。
腕を枕にして、わたしは一人、放課後の教室で眠っていた。
しばらくすると教室にアイが入ってきて、たぶんわたしはアイの用事が終わるのを教室で待っていたんだろうと予想する。
確か、去年の夏にも同じようなことがあった気がする。
“ウタ?”
首をちょっと傾けながら口をぱくぱくさせてわたしに近づくアイを上から眺める。
たとえ夢の中だとしても、わたしにしか聞こえない声を紡ぐアイを見て胸が震えた。
どうしてそんなに、優しい顔でわたしを見つめているの。
夢から覚めたらアイはもうわたしのことを視界に入れてくれないのに。