アイはもうわたしと仲直りする気は無いのかもしれない。そう思ったらもう話しかけられない。
教室の、アイよりも後ろの席から背中を見つめる。わたしはもう、アイを振り向かせることが出来ないんだ、きっと。
夏だよ、アイ。
声を置き去りにしたあの夏から2年も経った。藍佑と出会ったあの春から1年と3ヶ月。このまま夏休みに入って会うこともなくなって、夏休みが終わったらわたしたちはただのクラスメイトになっちゃうのかな。
17年の人生で、わたしたちが関わりあったのはたったの1年と3ヶ月だ。
たった1年3ヶ月は、ただのクラスメイトに戻ったとしてもアイの人生に大きく影響を与えない長さなのかもしれない。きっとアイはわたしのことなんか忘れて立派なお医者様になるんだろう。
そんなの絶対に嫌だ。
嫌なのにわたしはもうどうすればいいのか分からない。
きっと、ううん、絶対に。わたしは、アイとただのクラスメイトに戻ったとしても一生“たった1年3ヶ月”のことを忘れないだろう。
それならわたしは、今すぐに行動するべきなのにやっぱり体が動かなくてアイの背中を見つめることしかできない。
「アイ」
小さな声で名前を呼んだ。夏が嫌いになりそうだった。
アイのことも嫌いになれたらどんなに楽か考えたけど、きっともうわたしは1ミリだってアイのことを嫌いになれないだろう。