A4サイズのノート。それがアイツの全て。
普通のサイズから比べたら大きな、だけど世界から比べたらちっぽけなノートがアイの全てなのだ。
それをわたしは可哀相だとは思わない。だけどその世界を飛び出そうとしないのは、どうしてだろうと思う。
ユウタと自己紹介したら、大抵の人が男の子みたいだねって言うからもう慣れた。佑歌、でユウタ。漢字だけ見てみれば女の子に見えなくもないわたしの名前。
「アイ、帰るよ」
返事が無いのはいつものことだけど、振り返ればニコニコと嬉しそうに笑うアイが目に入る。
A4サイズのノートをしっかりと抱えて、行こう、と口をぱくぱく動かした。
藍佑が喋れなくなって、2年が経つらしい。