忘れるはずがない、私が17歳だったとき、この絵に出会った。
季節は初夏。
あの頃の私は自分の居場所を失くしていた。
決して物理的な意味ではない、友達はいたし…
けれど、私は自分が今どこにいるのか分からず、
何のために毎日学校に通っているのかすら分からなくなりかけていて、
もう少しで不登校になるところだった。
誰にも言えない底なしの不安に日々襲われていた。
そんなときに、見つけたのだ。
…というより、吸い寄せられるようにその絵の前にいた、
と言った方がいいのかもしれない。
題名は確か…
「バイオリンと少女」。
壮大な森の中のちっぽけなその少女の姿に目が奪われて、
気が付けば、私は足を止めてじっとその絵を見入っていた。
とても、魅力的な絵だ…
自然とそんな感想を抱いた。
描いた人の心の温かさが伝わってくるような…
油絵を描くときに気を付けるべきこととして、ある人が言っていた。
緑はなるべく使わないようにって。
緑は絵を壊す色だからって。
けれど、目の前にあるその絵はそのキャンバスのほとんどが緑で覆われていた。
その中に溶け込むようにたたずんでいる少女――
少女がまとっている純白がよく映える。
深い緑色を表現しているにもかかわらず、その色合いはとても明るい。
だから見る者の心を自然と穏やかにする。
私は、この絵に救われた。
明日もまた生きよう、学校に来ようって。
私にとっては大きな決心だった。
でも、
その絵がどうしてここに―――
「この絵、覚えてる?」
私は混乱のさなか、やっとのところで、真人くんの方を向いた。
「この絵…」
「オレが描いたんだ」
季節は初夏。
あの頃の私は自分の居場所を失くしていた。
決して物理的な意味ではない、友達はいたし…
けれど、私は自分が今どこにいるのか分からず、
何のために毎日学校に通っているのかすら分からなくなりかけていて、
もう少しで不登校になるところだった。
誰にも言えない底なしの不安に日々襲われていた。
そんなときに、見つけたのだ。
…というより、吸い寄せられるようにその絵の前にいた、
と言った方がいいのかもしれない。
題名は確か…
「バイオリンと少女」。
壮大な森の中のちっぽけなその少女の姿に目が奪われて、
気が付けば、私は足を止めてじっとその絵を見入っていた。
とても、魅力的な絵だ…
自然とそんな感想を抱いた。
描いた人の心の温かさが伝わってくるような…
油絵を描くときに気を付けるべきこととして、ある人が言っていた。
緑はなるべく使わないようにって。
緑は絵を壊す色だからって。
けれど、目の前にあるその絵はそのキャンバスのほとんどが緑で覆われていた。
その中に溶け込むようにたたずんでいる少女――
少女がまとっている純白がよく映える。
深い緑色を表現しているにもかかわらず、その色合いはとても明るい。
だから見る者の心を自然と穏やかにする。
私は、この絵に救われた。
明日もまた生きよう、学校に来ようって。
私にとっては大きな決心だった。
でも、
その絵がどうしてここに―――
「この絵、覚えてる?」
私は混乱のさなか、やっとのところで、真人くんの方を向いた。
「この絵…」
「オレが描いたんだ」

