ぼさぼさのテルくんの髪を気にしつつ家の鍵を閉めると、それをあたしの手に握らせた。

首を傾げると「実衣が持ってろ」とだけ返される。


「あたしの方が帰り遅いよ?」

「…言っただろ。仲間とバイクで走り回るってよ。だから飯作って待っとけ」

「はあい…、晩御飯のリクエストは?」

「……辛ぇもん」

「辛いもの…考えておくね!」


小さく頷いたテルくんは少しだけ満足そうに笑う(とは言っても鼻で笑われたけど)。

あたしの手に握らせた鍵より、少しだけ大きな鍵をポケットから取り出したテルくんは車庫に置かれたバイクにそれを差し込む。

相変わらず綺麗に磨かれたバイクは、テルくんに似合うアメジストの色をしたものだ。

夜中に見ればとても輝いて、バイクに関してあまり詳しくないあたしでも見惚れるくらいである。