「そこの女の兄貴について、詳しい情報をやると言ったらどうする」

「!!!」


明らかに動揺する実衣に、俺は極めて冷静な表情を浮かべていた。

コイツは実衣の兄貴だけでなく、実衣まで利用するつもりなんだ。


「…今更何言われようとてめぇを信用するつもりはねぇ。
二度と俺達を私用で呼びつけんな」


ガンッ!とコンクリートの壁を殴れば、実衣の身体がびくりと震え上がった。


「おい、女。お前の兄貴はその男に呪いをかけられたようなものだ。
それでもソイツを信じるのか、お前は」


諦めが悪いのか、飛澤が問う。俺は舌打ちをして実衣を見れば、困惑しながらも俺へ視線を向けた。


「て、テルくんは…! そんな悪い人じゃありません…!!」


俺の胸に顔を埋めた実衣は、それ以上口を開かない。

…バカかよ、コイツ。
こんな我儘ばっか言って振り回すような男なのに、キライだと言って上手く突き放せずにいる男なのに。


本当、だから実衣のことが愛しいと思ってしまうんだ。