「起きろ、実衣」

「……んん、テルくん?」

「何背後とられてんだ、気をつけろ」

「ごめ、…あ! テルくん、後ろっ……!」


俺の背後に迫っていた男に、焦ることなく実衣を抱きかかえながら蹴り飛ばす。

唖然とする実衣の表情が面白かったけど、今のん気に写真を撮れる場合じゃないな。


「お前、人の話を最後まで聞くというのは出来ないのか」

「…悪ぃけど、てめぇらの教えとは違うんだよ」


実衣の兄貴はそこそこ強かったけれど、それ以上に誰かに影響を与えることが多かった。

それこそ俺はアイツに救われたのだ。


「…帰んぞ、実衣」


なあ、いつか俺から実衣に嫌われるようなことを言ったら。アイツは天国で俺を叱るだろうか―。