いつもよりずっと低い声で、テルくんがそういうからあたしは断らなかった。


怒られるかな、と思いつつテルくんの頭を二度撫でる。さらさらしてるテルくんの髪は、思ったより寝癖がつくし、香水とかの匂いも残る。

…今まで何度か、香水の匂いがしたことはあった。だけど、あたしは聞くのが怖くて。テルくんだって男の子だから、好きな人くらい出来たんだろう。そう思うしかなかった。


テルくん、あたしは今でも変わらないよ。


あたしは君が――。


「…実衣、泣いてんのかよ」

「っえ? 泣いてないよ?」


思わず目元を拭っても濡れていない。テルくんは目を閉じたまま、「そうかよ」と呟いてあたしの腰を抱きしめた。


本当にずるい、テルくん。


「……テルくん、おやすみなさい」


あたしは自分を落ち着かせるように、テルくんの頭を何度も撫でた。