薄汚れた(?)男性はあたしをちらりと見て、
「で、どっちだ」と問いかけてきた。


逃げ出したい足を必死に奮い立たせながら、「こ…此処に杜禰リマさんがよく来ると聞いてっ来ました!」と言えば、ッチと盛大に舌打ちをされた。


思わず涙が出そうになると、男性は頭をぼりぼりとかいて「帰れ」と睨んできた。


こくこくと頷いたあたしは小野瀬さんの手を掴んで、兎の如くその場から逃げ出した。



「……び、びっくりしたあ…!」

「ありがとうっ、沖宮さん…! わたし、男の人が苦手だから怖くて…」

「ううん! それは全然いいんだけど、あの人に失礼な態度取っちゃったかなあ…」

「…わたしも思うけど、でもあんなにも睨まなくたっていいのにって思う。
あそこのカフェは諦めて、今日は別のところへ行こう?」

「そ、それもそうだね!」


折角小野瀬さんと出かけるんだから、こんな思いのまま帰るのは嫌だった。


だけど、明日あたしだけでも謝りに行こう。少なからず、あの男性には嫌な思いをさせてしまっただろうから。