《Side:照道》


目の前でぼろぼろと泣く実衣を、俺は包むように抱きしめた。

手術を終えてから俺はずっと眠っていたらしく目覚めたら佐久間がいきなり「鞠を悪鬼実野族に入れるで」とか言い出すわ、実衣が危険に遭ったとか心臓に悪いことを言い出すわで散々だった。


やはり沖縄で会った時に確信していたが、実衣は飛澤に脅されていたようだ。
あの留守番メッセージも実衣が俺のためを思って言った事だと、佐久間は話していた。


「……何が俺を守るためだよ、バカ実衣」



そんなことを言いながら、俺は実衣の兄貴を思い出した。
兄妹揃って自己犠牲が激しい性格故に、突き放せば嫌うと思っているのだろう。


しかし、実衣なら知っているはずだ。

突き放されても嫌うことなんてありえないことを。