おち、落ちる…!
ぎゅっと目を瞑ってテルくんの背中にしがみつくと、ククと笑う声が聞こえた。多分。

テルくん、意地悪だからあたしが慌ててるのを見て面白がってるのかな…?


仕返しにさっきよりも強く抱きつけば、テルくんが「バァカ」と言いながらもあたしの手に触れた。


テルくんの背中に頬を寄せれば、少しごつごつして固い。そっか、テルくん男の子だもんね。広くて立派な背中にあたしは猫のように擦り寄った。


「……広場? だよね、ここ」

「…ん、実衣あっちまで走れ。落としたら三回回ってワンな」

「ええっ!?」


着いた場所は芝生が植えられた、広々とした場所だった。遠い昔、ここでお兄ちゃんとキャッチボールしたのを思い出す。


兎に角テルくんの言う通り、向こうのほうへ走れば、あたしの頭上を赤くて丸いものが通り過ぎた。


犬のように必死に走ってそれを両手で掴まえれば、振り返ってテルくんに見せた。


「て、テルくん…! こんな夜中にキャッチボールするのっ…!??」