実衣は憶えてねぇかも知れないが、杜禰リマが売れ出したきっかけは一つの作品が映画化したことだった。
あの映画を観て人気が急上昇したのだろう。
実衣の兄貴だって映画を観てからはまったらしく、当時俺は中学生だったが、無理やり映画館に連れて行かれたのを憶えている。
あの時、映画を観ても俺にはよく分からなかったのが感想だ。
愛について語っただけであり、そこに何か隠されているのかと思ったが、特に仕掛けなどなくありがちなラブストーリーだった。
それなのに実衣の兄貴と来たら。
《これ、俺の友達が書いてるんだ》と自慢げに話して、普段では到底考えられないほど自分のことのように喜んでいた。
あの時の映画の題名、ずっと霧がかかったように思い出せずにいたが、ようやく思い出せた。
《170回、好きだと言ったら》だ。

