しかし、いつまでも黙っていることなんて出来ず、メニュー本へ視線を落としたあたしは渇ききった声で話しかけた。
「あ、あの…小鳥遊さん。あたしこういったお店は初めてなので、何かオススメを紹介してくれませんか?」
「それなら鶏胸肉のガトー仕立てはどうでしょう?
バジルソースが丁度いい具合にかけられていてとても美味しいですよ。僕の行きつけの店でもよく食べます」
「じゃ、じゃあそれにします…!」
「では注文しますね」
先程まで暗い顔をしていた小鳥遊さんは、優しい笑みを浮かべて店員を呼んだ。
黒縁メガネをかけた小鳥遊さんを少しだけ見つめた。よく見れば耳にピアスが一つ付いてある。きらりと輝くピンク色に近いそれはまるで桃妃子さんのように見えた。

