170回、好きだと言ったら。




伏せられた小鳥遊さんの瞳は、とても悲しげに揺れていた。


「…飛澤さんにとって同じ年であり、今まで一匹狼みたいなイメージだったにも関わらず気を許していた人だったんです。
それなのに…亡くなってしまって。その時の事故に僕も巻き込まれて、この傷が残ってしまいました」

「…小鳥遊さんの傷はそこだけですか?」

「はい…、兄が庇ってくれてこの傷一つで済みました。
僕以上の傷が残ってしまったのは飛澤さんだったんですよ…」

「!」

「あの当時、僕はまだ小学生でした。飛澤さんは中学一年生だったと思います。明らかに心を閉ざした飛澤さんを救ったのが―、貴方の兄春威だったんです。
人思いなのに腹黒で、勝手に人の心を見透かすような人で…だからこそ飛澤さんも心を許したのだろうし、桃妃子だって…彼を好きになったのでしょう」