170回、好きだと言ったら。




メニュー本を一度片付けた小鳥遊さんは、おもむろに襟を引っ張って首元を晒す。

そこに現れた痛々しい手術の痕に、あたしは目を見開かせた。


「……僕は幼い頃、三つ上の兄がいました。
喧嘩好きで裕福な家庭育ちとは思えないような口調。その全てが両親は気に入らず、いつしか家を追い出してしまったんです。
その時に兄がお世話になっていたのが飛澤さんのところで、僕も飛澤さんとは気軽に話せるような間柄でした」


何で…あんな人と気軽に話せるのだろう。
失礼なことを思っているのは自覚しているが、あたしはとても飛澤さんがいい人だとは思えない。


それに小鳥遊さんの首元につけられた傷と飛澤さんがどう関係しているのだろう。


「…沖宮さんと同じ、僕も兄を亡くしているんです。春威のように事故で…」

「!!」