テルくんや潤さんとは違った背中を見て、あたしはまたテルくんに思いを馳せていた。
何気ないテルくんとの日常が、こんなにもあっさり崩れてしまうなんて。
苦しくて、胸が悲鳴を上げた。それを隠すように小鳥遊さんの背中に抱きつけば、彼が小さく笑ったような気がした。
「ここ…! 超一流のシェフがいるフランス料理のところじゃないですかっ!」
「ええ。僕、ここで今人気急上昇中だと言われているサーモンとバジルのテリーヌが気になってしまって」
「…す、住んでる世界が違いますね」
「ご存知かは分かりませんが、僕小鳥遊企業の叔父がいるんです。それで少しだけ裕福な生活を送らせて頂きましたが、やっぱり僕には合いませんでした」
案内された席に着くと、苦笑じみた表情を浮かべる小鳥遊さん。
あたしは「いいじゃないですか」と少しだけ笑みを見せた。