あたしは負けないと言わんばかりにテルくんを見れば、はー…と長いため息が聞こえた。

人参を空気のように扱いつつ、どんどんお弁当の中身をカラッポにしていく。あたしはそれを横目で見つつ、自分のお弁当へ箸を伸ばした。


「テルくん…、無言の圧力であたしに人参を近づけないで?
一つくらいは頑張ろうよ! ね!!」

「無理これ食いもんじゃねえ」

「テルくん……ファイト!」

「実衣キライ」

「キライでもいいから!!!」


あたしの勢いに押されたテルくんは、物凄いしぶしぶと言った様子で観念して食べてくれた。
よかったね、人参さん…!


「…んじゃ、俺そろそろ行くわ。何かあったら連絡しろ。電話に出るかは置いておくけどな」


そう言いながらテルくんはあたしの頭を一度撫でた。