170回、好きだと言ったら。




一階に下りると、テルくんがカウンター前の椅子に腰掛けていた。

あたしが階段から下りてきたのをぼんやりと見て、周りに仲間がいるにも関わらず「実衣」と呼んだ。


「テルくん、髪ぼさぼさだよ?」

「……バイク走らせてきたからな」

「…苦しいところは?」

「…ねぇよ、帰んぞ」

「テルくん、ごめんなさい。黙ってて…。まさかあの人が飛澤さんの率いる族の人だとは思わなくて…」


あたしの言葉を聞いたテルくんは、そっぽを向いて「別に」とだけ呟いた。


立ち上がってあたしの手を握り締めると、仲間の人達が「お気をつけて!」と言うのを無視してその場を立ち去ろうとする。

あたしは一度立ち止まってお辞儀だけをすると、そのままテルくんの手に引かれながら店を後にした。