そんなわたしを見て、久遠くんは、今度は声を出して笑ったのだった。
「あのさ。俺、自分が何者なのか、ずっと、すげー知りたいと思ってて」
「うん」
「だから、こうしてたまに日本に来たり、イギリスに帰ったりを、くり返してんだよね。それに……」
どこかはっとしたように言葉を止めた久遠くんが、落としていた視線を上げて、こちらを見る。
明確に目が合ったので、「それに?」と聞き返すと、なぜか額を、むにぃ、と人差し指で強めに押された。
「え、イタッ、え、なに……」
「きなこちゃんが変な顔してるから、言おうとしたこと、ぜーんぶ飛んでった」
「ええっ」
変な顔とは、失礼な。
言いたいことを忘れさせてしまうほどだなんて、いったいわたし、どんなひどい顔をしていたというの。
恥ずかしいやら、怒りたいやら、いたたまれなくなったので、グラスの底のほうに残っていた抹茶ラテを、勢いにまかせて吸い上げた。
やさしい甘さと、ほんのりとした苦みが、喧嘩しないで共存している。
和風のお茶の香りと、洋風のミルクの味が、仲良く鼻を通りぬけていく。
間違いなく人生でいちばん美味しい抹茶ラテだった。
久遠くんがいなかったら、このカフェに入ることもなく、わたしは依然として、この味に出会えていないままだったのだろう。
そう思うと、やっぱり久遠くんは、世界を変える存在だ。



