きみは宇宙でいちばんかわいい



だけど、だからといって、このまま黙っているわけにもいかなかった。


「そういうのってね、現代でも、いろいろあると思うの。人種とか、性別とか、そういう境目が、いい意味でどんどん曖昧になっていってる気がする。いま、着物じゃなくて洋服が主流になったり、女の人が普通にズボンを穿けるようになったりしてるのと同じように、たとえば、男の人が当たり前にお化粧したり、スカート穿いたりする時代も、いつか来ちゃうんだと思う」


ぜんぜん上手に話せなくて、もどかしい。

それでも、久遠くんはずっと黙ったまま、わたしのへたくそな演説に耳を傾けてくれていた。

そして、そのことに気づいたとたん、突然カッカと顔が熱くなってしまう。


ああ、なにをべらべらと熱弁しちゃっているんだろう。


「ええと、だからね、つまりなにが言いたいかというと、久遠くんは、紀貫之なんだよ」

「……は、急になに?」


久遠くんが小さく息を吐いて笑った。


だけど、さっきのいびつな笑い方とは、すこし違う。

なぜか、ものすごく、ほっとする。


「千年後の世界は、たぶん、もっといろんなことが変わってるでしょ。それでね、それはきっと、いまこの時代に、久遠くんがいてくれるおかげなの」


いったいなにを口走っているのだろう。

いよいよ本格的に、自分でも意味不明になってきた。


都合のいいやつにくわえて、おかしなやつだと思われたら悲しすぎるので、このあたりで黙っておくことにした。