「……んで、逆に、日本のじいちゃんは、俺が生まれたとき『念願の男だ!』ってすげえ喜んだらしいよ。じいちゃんの子ども、うちの母親も含めて娘しかいなくて、その娘たちが生んだのもみーんな女の子で、つまり、俺がはじめての男なわけ。で、『彩芭には大和魂を叩きこまねえと』って、ずっと躍起になってんの」
久遠くんは、もういちど口をつぐむと、そっと目を上げた。
そして、こっちを向き、少し困ったふうに、へにゃりと顔を歪ませた。
「俺ってさ、大和撫子でありながら、大和魂も持ってなきゃいけねーのな? なのに、こんな金髪だし、いちばん得意なのは英語で、国籍はイギリスなわけ。もうめちゃくちゃだよ。自分でもわけわかんねーから」
いま、たしかに彼は、笑みを浮かべているはずだ。
それなのに、ぜんぜんそんなふう見えないのは、どうしてなんだろう。
「……久遠くん、見て。あのね、このサイトを読んでみると、紀貫之の『土佐日記』があったから、千年経ったいま、こうやって男女関係なく、誰でも漢字とひらがなを便利に使って、文章を書いたりできるようになったんだって」
こんな特異な性質を多く持った男の子に、なにを言うべきなのか、わからない。
なにせ、わたしは平凡な日本人の女の子として、なにも考えないで、ただ能天気に生きてきた存在だ。
そんなわたしが、久遠くんになにか言葉をかけていいものなのかも、本当はわからない。



