「ふうん。つまり、かな文字を使う以上、女のふりをする必要があったってこと?」
「うん、そうみたい」
「……なんか、そういうのって、めんどいね」
そう言った久遠くんの声のトーンが、少しだけ落ちた気がして、妙に気になった。
「久遠くん……?」
「……なあ、きなこちゃん。“らしさ”って、何だと思う?」
「え……」
身を引き、浅く座っている椅子の背もたれに体をあずけた彼の両手が、チェック模様のスラックスのポケットに、まるごと吸いこまれていく。
目線を下げ、くちびるをとがらせている横顔は、どこかすねているようにも見えた。
「イギリスのグランダは、俺が生まれたとき、『まさに大和撫子だ!』ってすげえ喜んだんだって」
わたしが言葉を見つけられないでいるうちに、久遠くんはいきなり切り出した。
「いいところのお嬢さんだったらしいナニーを嫁に迎えるくらい、“日本のしとやかさ”みたいなのに憧れてる人だから、ひとりしかいない孫にもそれを求めてるっぽくて、いまだに俺のこと、日本の女の子同然に扱ってくるんだよね。まあ、ちょっと女っぽい顔してる俺にも、原因はあるんだろうけど……」
そこで、久遠くんは、いちど言葉を区切った。



