きみは宇宙でいちばんかわいい



「でもさぁ、これの作者って、男じゃねーの? この名前で、女なの?」


ノートにタイトルと作者名を書き写しながら、久遠くんが不思議そうに首をひねる。

『紀貫之』の読み方はわからないにしても、その字面から、どうやら男性だと判断したらしかった。


「うん、“きの・つらゆき”って読むんだよ。おっしゃる通り、男の人で、当時はすっごく有名な歌人だったみたい。百人一首にも詠んだ和歌が残ってるよね」

「へー……」


あまり興味がなさそうに相槌をうちながら、久遠くんが教科書に目を落とす。


「そんじゃあ、キノさんは、ほんとは男だけど、女のふりして『土佐日記』を書いたってこと?」

「うん、そういうことだよね、たぶん」

「なんで?」


理由なんかを聞かれても、わたしもそこまで詳しくないので、よくわからない。

だけど、わからない、で済ますには日本人として情けないし、勉強をみてほしいと頼ってくれた久遠くんに申し訳が立たないので、スマホを使って速攻で調べてみた。


「あ、なんか、当時はね、漢字は男性が使うもの、かな文字は女性が使うもの、っていう区別があったんだって。でも、紀貫之は、かな文字を使って『土佐日記』を書きたかったみたいだよ」


該当部分を久遠くんに見せるように、スマホをテーブルに置いた。