「ふーん。いいの? お礼に、俺はきなこちゃんの英語みてあげるつもりだったけど」
「えっ」
「きなこちゃんさ、ちょっと、英語苦手だろ?」
「うっ」
「小テストもさー、いつも、半分も取れてないもんな」
「うう……っ」
あまりにも図星で、一言ずつから受けるダメージが測り知れず、言い返すことさえできない。
そんなわたしを見て、形のいいくちびるの左端が、にやり、とゆっくり天を向いていった。
「オッケー。じゃ、決まりで」
薄茶色の瞳をきゅっとすぼませ、金色の髪をさらりと揺らす。
いつも通り、圧倒的なオーラを放つ久遠くんは、そのかけらも無いわたしの返事など待たないまま、踵を返したかと思えば、すぐに歩きはじめてしまった。
これを追いかけない、という選択肢は、わたしにはたぶん、与えられていないのだろう。



