そういうことなら、いいよ、と。
うっかり承知しかけたとき、視界の端に朝香ちゃんの姿が見えたので、踏みとどまらずにはいられなかった。
「ええと……そういうことなら、朝香ちゃんに頼むのなんて、どうかな?」
「え? なんで? 俺はきなこちゃんに頼んでんだけど」
「でも、だって、朝香ちゃんってすごく勉強が得意なんだよ。わたしなんて比べものにならないくらい、成績もいいし……」
半分くらいはちゃんと本音だったけど、もう半分は、苦しまぎれに思いついた理由だった。
新学期の翌日以来、久遠くんとふたりでランチタイムを過ごす習慣が、ずっと続いている。
それを、彼に片想いしているはずの朝香ちゃんは、なにも咎めることなく、普通に許容してくれているのである。
ふたりは友達だってわかってるし大丈夫だよ、
それにななちゃんが織部くんを好きなことも知ってるから、――って。
でも、どうしても、わたしは朝香ちゃんの恋を応援したいのだ。
さすがにこれ以上、わたしが久遠くんとふたりきりの時間を持つというのは、あってはならない気がする。



