「さすがに、この量をななに持ち帰らせるわけにはいかねーわな」
「ええっ、ダメダメ、そんなの! こっちこそ、柊くんまで巻きこむわけにはいかないし」
「いちいち水くさいんだよな。そんなふうに他人扱いされたら、逆に悲しくなるんだけど」
ずき、みたいな。
それでいて、どき、みたいな。
ぐじゅ、みたいな。
それなのに、きゅん、みたいな。
いろんな感情の混ざりあった、複雑な音が、胸の真ん中で小さく響いては、名残惜しそうに消えていく。
好きな人から優しくされて、嬉しい。
柊くんにとって、たしかに特別な存在でいられていることを、すごく幸せに思う。
でも、いつだってそれは、決してわたしの欲しい気持ちではないのだ。
もはや、ありがとう、とうなずくしかできなかった。
そして、お兄ちゃんから貰った一万円でお会計を済ませると、柊くんは本当に、大きな紙袋を自分の右腕にぶら下げてしまったのだった。
「木原さん、みーっけ」
その後、ふたりでお店を出ようとしたとき。
朝香ちゃんに付き添ってくれていたはずの久遠くんが、なぜかお一人様で、突如として目の前に現れたので、面食らった。
呼称が“木原さん”なのは、わたしがいま、ひとりではないからだろう。
もう、こういうのにも、ずいぶん慣れてきてしまったように思う。



