はは、と軽く笑っていらっしゃるけど、笑い事ではないのだ。
もみじ饅頭、買えるだけ買ってきて、と。
兄から一万円札を手渡されたのは、きのうの夜、本当に寝る直前のことだった。
ぎょっとして、どれくらい必要なのか訊ねたら、一万円分に決まってるだろ、と冗談みたいな返答。
というか、絶対に冗談なのだ。
でも、じゃあ仮に買って帰らなかったとしたら、うちのお兄はまたいろいろといちゃもんをつけてきて、大変なのである。
「からかわれてんなぁ、なな」
「なんでこんな、子どもみたいな意地悪してくるのかなぁ。大学生にもなって……」
「ななの気を引きたいんだよ。悟朗くんが超シスコンだって、ななも知ってるだろ? 妹のことがかわいくて、構いたくて、しょうがないんだよ」
「ねえ、柊くんまでからかうの、本当にやめてよ」
そろそろ兄による独裁政権を倒し、この恐怖政治を終わらせないといけない。
そのためには、まず、民衆であるわたしが強くならないといけないのだけど、実はそこがいちばんの難関ポイントなので、どうしようもない。
なんて、おバカなことを考えていたら、いきなり右手が無重力みたいに軽くなったので、驚いた。
「これは、俺が持って帰るから、いいよ」
恐ろしい量の箱が入ったカゴが、なぜか、柊くんの手に奪い取られてしまっている。



