水を持った久遠くんが、ベンチで休む朝香ちゃんに駆け寄っていく。
そして、彼がなにか声をかけると、朝香ちゃんは少し驚いたように顔を上げ、それから恥ずかしそうにうつむいた。
だけど、朝香ちゃん、なんだか少しだけ元気になったようにも見える。
やっぱり、恋のパワーというのは、どんな薬よりも、どんな魔法よりも、抜群に効果的なのだと知る。
ひとまず、ほっと胸を撫で下ろし、踵を返した。
どうしても買わなきゃいけないお土産がある、
というのは、実は真っ赤な嘘でもないのである。
買い物カゴのなかに、広島名物・もみじ饅頭をてんこ盛りに詰めこみ、伝統のありそうなお土産屋さんの店内を歩いていたところ、再び誰かに肩を叩かれた。
「――なな」
優しい声と、この呼び方。
ふり向く前から、もう、胸が高鳴ってしまう。
「柊くんっ」
「よう。ひとり? 小宮山さんと回るって言ってなかった?」
かくかくしかじか、わけを説明すると、柊くんも心配したように眉を下げた。
それから、おもむろにわたしの右手に視線を移すと、今度は困ったように首を傾げたのだった。
「で、その大量のもみじ饅頭は、何だよ? ……まあ、なんとなく察しはつくけど」
「うう……たぶん、お察しの通りでございます……」
「ああ、ね。やっぱり悟朗くんか」



