朝香ちゃんが顔色を悪くしながら座りこんだのは、遠足の終盤、お土産屋さんをめぐっていた途中のことだった。
たぶん、間違いなく、さきほど訪れた広島平和記念資料館が原因だろう。
あまりにもショッキングな映像や、写真、展示物なんかを見てまわりながら、彼女がわたしの隣で辛そうに顔をしかめ、ずっと黙りこくっていたことには、気がついていた。
「帰るまでまだ少し時間あるし、ゆっくりしていこう? あそこ、休憩できそうだから、もうちょっとだけ頑張って歩ける?」
「うん……。ごめんね、ななちゃん、ありがとう」
朝香ちゃんには、ちょうど空いていたベンチに座っていてもらうことにして、わたしは少し離れた自販機でミネラルウォーターを購入する。
落ちてきたペットボトルをしゃがみこんで取りだし、再び立ち上がったのと当時に、背後からポコっと軽く肩を叩かれた。
「きなこちゃん、みーっけ」
わたしのことをそんなふうに呼ぶのは、クラスでたったひとりだけだ。
「あ……久遠くん」
「なあ、あっちの店にさ、すげー面白いもんがあるんだけど、見た?」
友達からはぐれ、ひとりでお土産屋さんをまわっていたらしい久遠くんは、かなり興奮した様子で、いきなりそうまくし立てた。



