「わたしね、去年、織部くんと同じクラスだったんだ。それで、たまにふたりが一緒にいる姿を見かけることもあって、なんとなく……そうなのかなって。というか、もうすでに、つきあってたり?」
「……え、と、あ、の」
「ええっ、嘘でしょ、ななちゃん、めちゃくちゃ顔に出てるよ!」
驚き半分、おかしさ半分といった感じで、朝香ちゃんはなんだかとても楽しそうに、細身の体をのけぞらせた。
あわてて両頬に手のひらをあてがう。
たしかに、ほのかに熱を持っているし、筋肉も少しこわばっている。
きっといま、わたしの気持ちは本当にダダ洩れなのだろう。
だけど、隠していても、べつに意味のないことか。
それに、久遠くんへの淡い気持ちを打ち明けてくれた朝香ちゃんに、同じ事項で嘘をつくのは、なんとなく嫌だった。
「あの、断じてつきあってはいない、のだけど。柊くんとは、実は、家が近所の幼なじみで、それで、ずっと、昔から、わたしの……片想い、なの」
「うわぁ、そうだったんだぁ! あのね、織部くん、去年、クラスでよくななちゃんの話してたよ。だから、なんとなくだけど、ななちゃんの片想いじゃない気がする。絶対に上手くいくと思う!」
ううん、そんなことない、絶対に片想いなんだよ。
だって、柊くんには、他に好きな女の子がいるから。
とは、どうしても言えなかった。
曖昧に笑って、下手くそなお礼を伝えるしかないわたしに、朝香ちゃんは「お互い頑張ろうね」と、花のように笑ってくれたのだった。



