「久遠くん、『気にしなくていいよ』って、言ってくれたんだ。『あんな、他人のこと見た目でしか評価できないようなやつ、小宮山さんには絶対もったいない』って」
わたしは、久遠くんについてあまりよく知らないけど、朝香ちゃんに対してそんなふうに言葉をかける姿なら、なんとなく想像することができた。
「そんなこと言う感じの人だとは思ってなかったから、ちょっとびっくりしたんだけど。でも、すごく、嬉しかったの。久遠くんは、“見た目”じゃないんだな、って思って。ひょっとして、わたしのことも、そうやって評価してくれてるのかな、って」
桃色の頬が、くしゅ、と更に赤く染まるのを、なんだかとても尊い気持ちで眺めていた。
胸の真ん中が、ぽかぽかして、すごくあたたかい。
きのう、柊くんの好きな人を知ってしまったときとは、まったく違う心境だった。
せめて、朝香ちゃんには片想いを叶えてほしい、なんて、本当に身勝手もいいところだけど、心の底から願ってしまった。
「朝香ちゃん、大切な気持ちを話してくれて、嬉しい。ありがとう」
なにか祈っているみたいに、おへそのあたりで組まれている指を、気づけばそっと握っていた。
「遠足、絶対いっしょに回ろうね」
「えっ、いいの?」
「当たり前だよ! すごく楽しみになってきちゃった」
「ありがとう、ななちゃん。わたしもすごく楽しみ!」
本当に嬉しそうに笑ってくれるから、わたしも嬉しくなる。
わたしがひっそりと育ててきた恋の花は、もう摘むほかないから、両手に持て余してしまっている水を、この美しい手のひらに、どうか分けさせてほしい。
そんなふうに、思った。



