「……朝香ちゃん、ひょっとして、久遠くんのこと……好き、なの?」
思わず口をついて出てしまっていた。
がばり、と顔を上げた朝香ちゃんと、目が合う。
「うん……実は、そうなんだ」
大きな瞳を何度かしばたたかせると、朝香ちゃんは少しの迷いを見せながら、それでもしっかり、うなずいたのだった。
「きっかけは、ほんとにちょっとしたことなの」
かわいらしい口元から、ぽつぽつと語られていく、恋が芽生えた瞬間の物語。
先日、朝香ちゃんは、よく知らない他クラスの男の子に呼び出されて、いわゆる告白というものをされたらしい。
でも、いかんせんよく知らない相手だったから、おつきあいの申し込みは断ってしまったのだという。
そうしたら、彼は人が変わったように、いきなり難癖をつけてきて。
『ちょっと美人だからって、お高くとまってんなよ』
なんて、なんの根拠もない最低の暴言を吐き捨てて、朝香ちゃんを置いて行ってしまったのだって。
あまりのことに驚き、傷つき、人知れず呆然としていたところを、久遠くんが偶然通りかかり、声をかけてくれた、と。



