嬉しさが半分、緊張が半分で、言われるがまま、どこか気品さえ帯びている後ろ姿についていった。
やがて朝香ちゃんが足を止めたのは、人気のない非常階段の麓だった。
「ごめんね、突然こんな、呼び出しみたいなことしちゃって」
「ううん、大丈夫だよ。ひょっとして内緒話?」
「うん……」
きょろきょろとあたりを見渡した朝香ちゃんは、傍に誰もいないことを確認すると、どこか真剣な面持ちで、再びわたしに向きあったのだった。
「ななちゃん、来月の遠足、たぶん久遠くんといっしょに回るよね?」
「えっ」
思わず、まぬけな声が出てしまう。
遠足とは、5月にある、我が校の恒例行事である。
そういえば、来週からはじまるGWが明けたら、すぐにそのイベントがやって来るのだった。
2年生は、去年の京都よりも更に西へ足を延ばして、広島に行く予定だ。
「ええと……特に、久遠くんとは、なにも話し合ったりはしてないけど……」
「え、そうなんだ。でも、久遠くんはきっと、ななちゃんと回りたいと思うんだよね」
朝香ちゃんは、どちらかというとポジティブな意味を含んでそう言ってくれている感じがするけど、それにはかなり語弊があって。
わたしは、久遠くんにとって、“使い勝手のいいやつ”なので……
と、言いたいのはやまやまだったけど、彼の面目を潰すだけでなく、自分のなけなしの名誉も失いかねないから、やめておいた。



