「……なんで?」
「え、と……」
だけど、戻ってきた答えは、当然とも思えるような質問返しだった。
なんとなく、正直には話しにくい内容なので、答えあぐねてしまう。
すると、眉根に刻まれている皺を、久遠くんはどんどん深くしていった。
「――ななちゃん、久遠くん、おはようっ」
かなり微妙な空気が流れている、わたしたちふたりの真ん中に、朗らかな声が落ちてきたのは、ちょうどそのときだった。
「小宮山さん。おはよう」
「あ……おはよう、朝香ちゃん」
ブスっとしていた久遠くんが、声のほうに目をむけるなり、まるで別人になったみたいに、にこやかな表情に変わる。
つられてわたしも顔を上げ、久遠くんほど上手ではないだろうけど、頑張って笑顔を作った。
「あの、ななちゃん、ちょっと話したいことがあるんだけど、時間もらってもいいかな?」
「え、わたし?」
予想外の指名を受けたので、びっくりしてしまう。
久遠くんとわたしが揃っていて、クラスメートから声をかけられるとなれば、決まって久遠くんのほうに用があるときばかりだったから。
ましてやそれが、あの小宮山朝香ちゃんから、だなんて。
「うん、実は、ななちゃんに、どうしてもお願いしたいことがあって……」
わざわざそんな前置きをされなくとも、朝香ちゃんに頼まれて、断ることのできるお願いなんて、ひとつもない気がする。



