ああ、早く、先生、来ないかな。
早く、ホームルーム、始まらないかな。


そんな祈りは、十数分後に通じたのだった。


普通に、定刻通り。

祈りが通じたとは、ちょっと言いがたいかもしれない。


……あれ?
でも、まだわたしのひとつ後ろが、空席だけれど。

初日から遅刻か、もしくは、体調不良で欠席?

誰だろう、
ひょっとしたら、仲良くなれたりとか、しないかな。


「実は、このクラスに、この春から転校生を迎えることになっててな」


教壇から放たれた衝撃的な言葉が、いきなり耳に飛びこんできて、はっとする。

クラスメートたちはもうすでにざわついていて、ああ、またワンテンポ遅れてしまったと、相変わらずの自分が残念でならない。


「おーい。久遠(くおん)、入ってこーい」


先生がそう呼びかけた次の瞬間、息をのんだのは、わたしだけじゃないと思う。


「どーも、コンニチハ。くおん、いろは、です。ヨロシク」


入ってきたのは、男の子だった。

もちろん、うちの高校の制服を、みんなと同じように着こなしている。


だけど、彼は、誰とも違っていた。



――なんて、

なんて、美しい顔立ちをした、人間なのだろう。


なんて綺麗な、金色の髪なのだろう。