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୨୧
久遠くんの様子がいつもと少し違っていることには、どんくさいわりに、朝一番に気がついた。
「久遠くん、おはよう」
「……ん、はよ」
普段どおりに挨拶を交わした瞬間の、どこかピリついたような、ほんのちょっとの違和感が気になって、スクバのファスナーを開ける手が止まってしまう。
思わずじっと見つめていると、やがて、金色の髪を揺らしながら、久遠くんのほうも目を上げたのだった。
「……なに?」
くちびるをつんと突き出し、眉をぐっとひそめている。
その顔を見てようやっと、あ、そうか、機嫌が悪いんだ、と気づくあたりは、やはり相変わらずのポンコツである。
「えと……ううん、ごめん、なんでもない」
「……きなこちゃんさ、結局きのう、全部ひとりでやったの?」
「え? きのう?」
「世界史のプリント。センセーから頼まれてたやつ、あったじゃん」
「ああ……」
間延びした声が出てしまったのは、そんなことなど、もはやすっかり忘れていたからだった。
きのう、梓ちゃんのお店から、家まで、どんなふうに帰ったのか、あまり記憶がない。
柊くんとどんな会話をしたのかなんて、本当に覚えていない。
家に帰ってから、貰ったお野菜について、どんなふうにママに説明したんだっけ。
夜ごはんに何を食べて、お風呂の入浴剤は何の香りで、何時ごろに眠りについたのだろう。
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久遠くんの様子がいつもと少し違っていることには、どんくさいわりに、朝一番に気がついた。
「久遠くん、おはよう」
「……ん、はよ」
普段どおりに挨拶を交わした瞬間の、どこかピリついたような、ほんのちょっとの違和感が気になって、スクバのファスナーを開ける手が止まってしまう。
思わずじっと見つめていると、やがて、金色の髪を揺らしながら、久遠くんのほうも目を上げたのだった。
「……なに?」
くちびるをつんと突き出し、眉をぐっとひそめている。
その顔を見てようやっと、あ、そうか、機嫌が悪いんだ、と気づくあたりは、やはり相変わらずのポンコツである。
「えと……ううん、ごめん、なんでもない」
「……きなこちゃんさ、結局きのう、全部ひとりでやったの?」
「え? きのう?」
「世界史のプリント。センセーから頼まれてたやつ、あったじゃん」
「ああ……」
間延びした声が出てしまったのは、そんなことなど、もはやすっかり忘れていたからだった。
きのう、梓ちゃんのお店から、家まで、どんなふうに帰ったのか、あまり記憶がない。
柊くんとどんな会話をしたのかなんて、本当に覚えていない。
家に帰ってから、貰ったお野菜について、どんなふうにママに説明したんだっけ。
夜ごはんに何を食べて、お風呂の入浴剤は何の香りで、何時ごろに眠りについたのだろう。



