「ま、いいけどさ……。で、きょう寄ってって頼んできたのは?」
「あ、そうそう、ちょっと柊に持って帰ってもらいたいものがあって」
「うお。やっぱ、パシリかよ」
「うふふ。なんといっても、持つべきものは弟よねえ」
テンポの良い姉弟の会話。
昔から変わらない、織部家のこれを傍で聞くのが、けっこう好き。
柊くんと、梓ちゃんは、10歳も離れているというのに、いつもすごく対等に会話をするなぁ、と感心してしまう。
「じゃじゃーん」
奥へ一度引っこんだ梓ちゃんが、なにやら大きな紙袋をぶら下げて戻ってきた。
それを見たとたん、柊くんが、わかりやすくげんなりした顔をする。
「きょうね、お客さんからいただいちゃったの。新鮮なお野菜の詰め合わせ!」
そして、そのげんなりした顔が、とうとうこらえきれなかったのか、短くとも深いため息をついた。
「すっごく有難いんだけど、なかなか重たくて、さすがに自分では持って帰れないなーと思って。今度好きなもの何でも奢るからさ、お願い、柊」
「……はい、わかった、了解です。まあ、たしかに姉ちゃんが抱えて歩くには、ちょっとキツそうな見た目してるもんな」
ありがとう、と茶目っ気たっぷりに言った梓ちゃんが、紙袋を柊くんに手渡す。
見た目よりずっと重たそうだ。
取っ手部分を握る柊くんの、こぶしの関節が、ところどころボコボコと白く浮き出ていた。



