やがて、家に向かうには直進するべきはずの交差点に差しかかったとき。
「あ。うわ、そうだ」
柊くんが、突然ひとりごとみたいな声を出したかと思えば、スニーカーを右へ方向転換したのだった。
「なな、ごめん。一瞬、姉ちゃんとこ寄っていい?」
「え、梓ちゃんのところ……って、お店のほう?」
「うん、そう。帰りに寄って、って、そういえば頼まれてたんだった。すっかり忘れてた」
柊くんのお姉さん・梓ちゃんは、わたしたちより10も年上で、自身でネイルサロンを経営している、すごい人物だ。
おまけに、とてつもない美人だし、どんなに細かなことでも抜け目のない、しっかり者。
たくさん面倒をみてもらった思い出も相まって、小さい頃から、わたしにとって世界一の、憧れのお姉さんである。
「なな、時間、大丈夫?」
「わたしもいっしょに行っていいの?」
「逆に、なんでわざわざここで別れるんだよ」
柊くんがうちのお兄ちゃんにしばらく会っていなかったのと同じで、わたしも梓ちゃんとは最近ぜんぜん会えていなかったから、予想外の展開で、すごく嬉しい。
でも、家族と会うのに、柊くんが当たり前にわたしを連れて行ってくれようとしてくれていることが、もっと、嬉しかったりする。



